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 この手牌で、何を切るのが正着でしょうか?



 のアンコは確定しているので、から何を切るかの選択となりますね。考えられる打牌はでしょうか。
 ここで村上プロが選んだのは。つまり、ピンズをリャンメンに固定したのです。切りの構想は、マンズでアタマを作り、ソーズのリャンカンを引いて、待ちでリーチすることでしょう。もちろんがアンコですから、チーすることだって可能です。ただし欠点としては、手牌が2シャンテンに後退することと、三暗刻が消えることがあります。
※リャンカン=リャンカンチャン。のようなカンチャンふたつがドッキングした形。
 これとは対称的な打牌が切りです。手牌はイーシャンテンのままで、三暗刻の可能性も残ります(四暗刻もありますね)。けれどもカンチャンだらけで、リーチ合戦に弱い形になるという欠点があります。
 両方の長所を捨てたくないという選択は切り、あるいは切りです。ソーズの受け入れは減りますが、イーシャンテンを維持しながら、ピンズをリャンメン候補とアタマ候補としてキープできるのです。
 さて、何を切るのが正解でしょう?
 この対局の数日後、牌効率による牌姿診断では、業界随一と思われる原浩明プロに聞いてみました。
「こんな手牌で原さんは何を切ります?」
「ぼくは三暗刻を見るのでを切りますね。カンチャンをチーしたあと、ツモり三暗刻のシャンポン待ちに変化することもアリです。ただし一発裏ドラにご祝儀がつくルールなら、を切ることもあります。は絶対に切りません。三暗刻が本命なので」
 どうでしょう。納得していただけるでしょうか。
 ここからリャンメンを作るという目的だけで、三暗刻とイーシャンテンを捨ててしまうのは、リャンメン病、すなわちフリー雀荘病ではないかと思われるのです。
 村上プロ専属の「チャイナ」など、フリー雀荘では、一発・裏ドラと赤牌にご祝儀(=現金チップ)がつきます。たとえば、リーチしてツモったときに裏ドラが一枚あれば、3人から100円ずつもらえます。
 1000点50円の100円はすなわち2000点分ですから、リーチツモ裏1の手牌では、4000点の点棒以外に6000点分の現金がもらえるのです。
 こういったルールのため、フリー雀荘では好形を作ってリーチすることが必勝法となります。つまり、リャンメンを大事にするようになるのです。しかし、雀賢荘のようなご祝儀のないルールでは、手役の比重が高くなってきます。村上プロはふだん打っている麻雀に打法をあわせたまま、補正していないのではないでしょうか。
 結果として、この局は流局し、村上プロのひとりノーテンとなりました。

 次局、メロンソーダ氏が2600点オールをツモアガリして、村上プロと点数がほぼ並びます。
 その次局、村上プロは最初からチートイツを狙っていました。テンパイしたのは8巡目のことでした(牌図2)。



牌図2

 場にはが3枚切れており、ピンズの上が安くなっています。それを狙って村上プロはと残しており、いまを重ねてテンパイしたところです。待ち牌とするのは、かドラのかという選択となります。
「ここはですかねえ……。いや、やっぱりドラ待ちッスよね」
 村上プロはを切って、ドラのタンキでリーチしました。すると、すぐに対面のペンタマン氏が、追いかけリーチをかけてきたのです。
 決着がついたのは1巡後のこと。☆ジャン氏のツモ切りしたに、ペンタマン氏が「ロン」をかけたのです(牌図3)。
 なんとタンキ! 村上プロが狙っていたを、ペンタマン氏もまた狙っていたのです。

牌図3

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