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■唯我独尊氏の華麗なる仕上げ |
崎見プロが優勝するには、2回戦の順位を1回戦とは正反対の並びにしなければなりません。ほぼ絶望的な状況です。それでも始まる前に、崎見プロは三人との点差を細かく確認しています。プロとしての基本フォームです。 東1局、いかにも鳴き派という選択をありゃ馬氏が見せてくれました。3巡目、手牌はこうなっています(ドラ)。 |
ツモ |
ここからありゃ馬氏は切り。をポンする構えを取りました。この手牌は234の三色も狙えますから、メンゼン派ならを切るでしょう。しかし三色狙いにはカンという急所があり、また安目のを引いて役なしになってしまうリスクもあります。一方、三色を捨ててもかドラのを引いてリーチしたなら、マンガンまで見込めます。破壊力でもさして劣らないのです。結局、ありゃ馬氏は4巡目にをポン、6巡目にツモという電光石火のアガリに仕上げました。 続く東2局は崎見プロの親番です。まずテンパイしたのはありゃ馬氏。13巡目にアンコにドラ一枚の手牌で、待ちのリーチをかけてきます。崎見プロが追いついたのは、残り1巡しかない17巡目のこと。ここで迷わずリーチといきました(ドラ)。 |
わずか一回しかツモがないのですから、無駄なリーチ棒を出したことになりそうです。しかしこれはリーチするべきでしょう。が出れば一発もついて9600点。そしてツモれば一発にハイテイまでついて6000オールが確定しています。崎見プロが2回戦で狙うのは、単なるトップでなく2着以下の順位にまで条件がついたトップです。そんな状況では、こういった万馬券は即座に買いなのです。これは「麻雀の技術」でなく「勝負の技術」であり、中級以上のレベルになると、短期戦で勝敗を分かつのはこちらの比重が大きくなります。 結果として、とはヤマに一枚ずつ生きていましたが、残念ながら流局。裏ドラがだったので、この手牌をアガっていたなら、奇跡の逆転への扉が開かれていたはずです。 しかし歴史に「もしも」がないように、麻雀で「もしも」をいい始めたらキリがないのも事実でしょうか。 |
東2局1本場、唯我独損氏がドラ1の3900点を素早くアガります。前局のリーチ棒2本も回収したのですから、大きなアガリです。 続く東3局、唯我独損氏は早くも4巡目にテンパイします。 |
ツモ |
このとき第1打に切ったがフリテンになっています。ここで慌てず騒がずテンパイを崩して、と切っていきます。すると8巡目、親のありゃ馬氏がリーチをかけてきました。その捨牌がこれです。 |
同巡、唯我独損氏もテンパイします。 |
ツモ |
現物のを切れば安全ですが、あえてション牌のを切り出します。もちろんリーチは不要です。すると、ありゃ馬氏が次巡ツモ切りしたのは。唯我独損氏はサラッと2000点をアガりました。心憎いばかりの軽やかなアガリです。 |
この状況では、唯我独損氏に高いアガリは不要です。高い手を作ると場が荒れることにつながり、危険が及んでくるかもしれません。このときは、唯我独損氏にとって早く安く場を流せるかが勝負です。そして唯我独損氏はその通りに要所を流していき、トップを取ったのです。珍しくも2回戦の順位は1回戦と同じ並びになっていました。まさに唯我独損氏の完勝です。 今回、崎見プロは惨敗しました。その理由としては、@ツキがなかった、Aパソコンに不慣れだった、B相手三人が鳴き派でスピード負けした、といった点が挙げられると思います。この三つはしょうがないことでしょうが、そんな状況でもプロならではの勝負術を発揮して健闘してほしかったと思います。崎見プロの戦術には、局視的な印象を受けました。 崎見プロだけでなく、これまでプロ対戦に登場したプロたちは多くが20代であり、否応なく人生経験が乏しい人たちです。その一方で、雀賢荘ユーザーは(大人が多い雀賢荘ですから)人生でも仕事でも先輩であることが多いでしょう。人生や仕事は麻雀よりはるかにシビアな勝負です。そんな現実で鍛えられているのですから、雀賢荘ユーザーが勝負術でプロを上回ってしまうのは当然だという考え方もあるかもしれません。 しかし、そんなことを言い始めたら、他の分野でも同じことになってしまいます。大リーグのイチローや将棋の羽生を例に出すまでもなく、プレーヤーは技術を磨くだけでなく、勝負術の深奥に触れることも不可欠です。そんなプロならではの勝負術を見せてほしいと思います。 今回の対戦後に掲示板で始まった論争を見て、安心するものがありました。ユーザーには、麻雀プロに対して理解もあるし、期待もある、と。もちろん、掲示板に書き込みする人たちですから、一般ユーザーよりも意識が高いと言う側面はあることでしょうが。 女子プロの中でも、崎見プロはキャリアもあり、麻雀を研究する姿勢も抜きんでた存在です。これからも総合体としての麻雀を磨いていってほしいと思います。 |
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