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■2回戦

 飯田プロがラスから一躍トップになったことで、観戦している側も明るい雰囲気に変わりました。2回戦は2着になればOKです。そして、このときにはもう、飯田プロのマウス扱いも安定感を見せ始めていました。

 飯田プロのアガったハネマンは、このあとの戦局にも大きな影響を与えます。というのは、前回朱雀王のMr.珍Jr.氏が、飯田プロの直撃によって「破壊」されてしまったのですね。
 それも無理のない話で、さして危険にも見えない牌を切って、ダントツからラスに叩き落とされたのです。ダメージを受けるなという方が無茶でしょう。

 2回戦は、大物手が飛び交う乱打戦になりました。そこで点棒スプリンクラーとなってしまったのはMr.珍Jr.氏です。

 東2局0本場、メロンソーダ氏がホンイツの4000オールをツモアガリ。そして東2局1本場、飯田プロがメンチンをMr.珍Jr.氏からロンアガリ。東3局には、わんわん氏がMr.珍Jr.氏からダブリーチートイ裏2をロンアガリ。なんと3局連続で1万2000点の炸裂です。

 東場を終えてMr.珍Jr.氏は箱割れ、そして残り三人がデッドヒートを繰り広げる展開になっていたのでした。


 南入して、三人の持ち点はこうなっています。

メロンソーダ氏 39500
飯田正人プロ  32900
わんわん氏   32300


 メロンソーダ氏がリードしているように見えますが、実質的なトーナメントリーダーは1回戦トップの飯田プロです。次が同2着のわんわん氏、そして同3着のメロンソーダ氏の並びとなっています。
 このまま2着を守ることができれば、飯田プロはメロンソーダ氏と2万3800点差以内ならトータル優勝となります。けれども、荒れ場となった2回戦が、そんな静かな展開を許すはずもありませんでした。

 中堅クラスのアガリが続いたあと、南2局1本場、メロンソーダ氏が1万8000点をアガります。こんな配牌を、こんな最終形にしあげての親ッパネです。

ドラ



チー ポン ロン


 一般に、手作りのテクニックとして語られることが多いのは、三色や純チャンなどメンゼンの手役狙いです。しかし、雀賢荘のように赤がなく、一発裏ドラのご祝儀もない麻雀で、もっとも実戦的に破壊力のある手役はホンイツでしょう。鳴いても2ハンあるホンイツは、字牌とドラで2ハンつけることで、マンガンに育てやすいのです。字牌をうまく活用することができたなら、手牌を大物手に化けさせつつ、ポンしてスピードアップすることまでできる。そんな一粒で二度おいしい存在、それがホンイツです。

 ここでメロンソーダ氏の配牌を、使えるエリアと使えないエリアに分けてみましょう。

+


 左が確定エリアで、右が未確定エリアです。この未確定エリアがどう伸びるかにより、この手牌が大物手に化けるのか、のみに終わるのか決まります。クズ手の扱いに腕の差が表れると言いますが、こういったところから焦って字牌を切ることなく、じっくりペンチャンを落としていくのがオススメです。この局、メロンソーダ氏はまさに理想的な手作りをしたわけですね。

 このアガリによって、メロンソーダ氏は飯田プロをかわしてトータルトップに踊り出ました。とはいえ、まだ大きな差をつけているわけではありません。
 麻雀では、トップに立つ局とトップを固める局によって、勝利を決めることができるもの。このときにも、メロンソーダ氏の次なる試練はトップを固めるアガリでした。その急所となったのは、次々局に当たる南2局3本場だったのです。

 飯田プロの配牌は、一見して勝負手でした。

ドラ


 ダブがトイツでドラもトイツ。つまり、出るポン見るチーで、マンガンが確定しています。飯田プロは2巡目に切られたをポン。これであとは一直線です。

 しかし、飯田プロは内心、やや焦っていました。
「(メンツを)ひとつは自力で作らなくちゃならんな」
 こんな言葉をもらしていましたが、自力で作らなくてはいけないメンツとは、ズバリの部分です。飯田プロはここからとチーしていき、手牌がとなってしまう進行を恐れていたのです。

 このとき、場には一九字牌ばかりが捨てられていました。しかも捨牌に表れている牌が、きれいに分散しています。いわゆる典型的なシュンツ場となっていたわけですね。
 飯田プロの手牌は、マンズ・ピンズ・ソーズと字牌が1メンツずつあるという「マンピンソーの法則」通りになっていました。ここでをポンして、マンズとピンズをチーして、ドラソバの待ちが残ってしまったら、たしかに見え見えの待ちになってしまいます。

「鳴いた手牌でもメンゼン感覚を持て」

 飯田プロの口癖のひとつです。これは手牌のキーとなる部分を鳴いたとしても、テンパイではなくアガリを見すえて大事に打てという意味です。出るポン見るチーではいけないということですね。まさに今回の手牌に当てはまる言葉です。
 をポンしたあと、メンツが足りているにもかかわらず、飯田プロはチュンチャン牌を集めます。の部分を切り換えたい気持ちの表れですね。

 6巡目、そんなおりに上家のメロンソーダ氏からが切り出されました。もちろん、チーすればイーシャンテンになるわけです(牌図3)。


牌図3

ここで飯田プロは持論を守ってチーしませんでした。この見送りが敗因になったのですから皮肉なものです。このとき、メロンソーダ氏の手牌はこうなっていました。

ツモ切り

 がアンコになれば即リーチですし、ソーズが伸びれば一通かタンピンに移行してをトイツ落としする。そういった手牌です。

 飯田プロがを見送った次巡、メロンソーダ氏のツモはでした。ここでのトイツを落とせば5800点以上が確定し、親マンから親ッパネまで見えています。
 しかし、ソーズが伸びることなく、先にテンパイが入ったことに、「行け!」という声を聞いたのでしょう。ここでメロンソーダ氏は即リーチしたのです。

 その瞬間、飯田プロはしまったという顔をしつつも、当然のように危険牌をノータイムでツモ切りしつつ突っ張ります。いつもはネコのように慎重な飯田プロですが、この局が勝負所であることを重々感じ取っていました。だからこそ、この局はなおさら慎重に打っていたのですね。

 決着がつくまでに時間はかかりませんでした。なんと、メロンソーダ氏の一発ツモ(!)という幕切れになったのです(牌図4)。


牌図4

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