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■まっすぐ進んで小さくだます

 次局東1局1本場、岸本プロはこんな手牌からを切り出します。

 ツモ ドラ

 驚いたのは8巡目のツモをあっさりとツモ切りしたことでした。

 ツモ ドラ

 カンチャンだらけとはいえ、この手牌は678の三色が見えています。それなのに安全牌のを残して三色目を捨ててしまったのです。その理由を聞いてみました。

岸本「この手は三色は無理だろうと思ったので、クイタンに走ることを想定しているんですよ」

 この段階で大胆にも手牌の伸びを見切っているのです。そんな打ち回しがピッタリ成功して、岸本プロは12巡目にテンパイします。三色を意識してたらこのテンパイは入らなかったところです。

 ツモ ドラ

 ここでふたたび驚いたのは、3巡目に切ったがフリテンになっているにもかかわらず、このまま即リーチをかけたことでした。まさに行け行けどんどんの岸本打法です。

 このときは場に3枚見えていて、は1枚も見えていない状態です。フリテンですからツモらなければアガれないというのに、がヤマにそれほど残っているようには見えません。ここでリーチをかけるのは、あまりにもリスクが高いと思うのです。

 そんな心配が現実となって、リーチを受けて3巡後に親のかもめのどらさん氏もテンパイしました。氏は親ですし、岸本プロの現物待ちでもありませんから、リーチをかけてもおかしくない状況です。しかしかもめのどらさん氏は慎重にダマテンを選びました。するとすぐに岸本プロが当たり牌のを持ってきて、親のピンフ・イーペーコーで2900点の振り込みとなりました。

牌図2

 振り込みとなったは、リーチをかけていなかったらと入れ替えられた牌ですから、結果としてリーチは失敗です。いや、その不幸を嘆くよりも、ここでは2900点ですんだ幸運を喜ぶべきでしょう。かもめのどらさん氏がリーチをかけていたら、1万2000点の振り込みになっていたのです。

 2局ともかなり直線的で、いってしまうならベタで素人っぽい打ち筋を見せている岸本プロですが、とりあえずこんな方針が確認できるでしょう。まっすぐに手を進め、テンパイしたらリーチする、と。基本はまっすぐ――それが岸本イズムのようでした。

 そのまっすぐ打法には、それが一番お得な打ち方だと思っている部分だけではなく、他の打ち手を惑わせる側面もあるようでした。これまでの2局とも、ストレートにアガリへ向かいながらも、そこに対戦相手をだます小技が入っていました。まっすぐ手牌を進めながら小さくだます――こちらがより近いのかもしれません。

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