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■ペンチャンの価値とは?

 さて、実戦の進行に話を戻しましょう。南3局、持ち点はかもめのどらさん氏が3万点を超えており、残る3人が2万点台の前半で競っています。3人ともここでマンガンをツモってトップに立ちたいところですが、その一方で2回戦を見すえて2着には収まっておきたいところです。そんな状況で、岸本プロが面白い打牌を見せました。

 ツモ ドラ

 マンガンに育てたいけれども早アガリもしたい。まだ場に動きのない5巡目でドラのは見えていない。そんな局面で、ここから何を切るのがベストでしょう?

牌図3

 ぼくだったらを切るかを切るかの選択になりますが、ここで岸本プロが切ったのはでした。その理由を聞いてみました。

岸本「この局が長引くならを切った方がいいですし、まもなく誰かがリーチしてきたり、ドラをポンしたりする局面に突入するのなら、ストレートにを切った方がいいんですよ。その境目を計算してみたら、約5巡になったんですね。ですから単独のペンチャンの価値は、5巡以内に勝負がつくならペンチャンが上で、5巡よりも長引くなら単独のが上になるのです」

 このとき局面は平静に見えるけれども、みな中張牌の切り出しが早いからもうすぐ煮詰まるだろう。だから速戦即決の構えでペンチャンを残して1シャンテンに受けておこう。そう考えたということですね。

 場のスピードに合わせて手作りのスピードを変えることは上級者なら誰でもしていることですが、そこに5巡という数値を導入したことに新鮮味があります。もちろんこれは理論値ですから、実戦でストレートに結果に結びつくわけではありません。ですが、こういった数字が設定されることで考えやすくなるわけですね。

 自分にはそんな数字は関係ないよという方もいることでしょう。いや、そちらの方が多数派だと思います。そう考えると、データ派人間の自己満足という気もしないでもないですが、岸本プロはそんなデータ派雀士の先頭を走っているのでした。

 さてを切った牌姿から、次巡に岸本プロはを引いてテンパイ。を切ってスパッと即リーチします。ペンチャン待ちのリーチのみ。かっこいい手牌ではありませんが、そんなことは気にもしません。手牌の値段と押し引きは関係ない――ここらへんの判断にもデジタルな臭いがします。

 このリーチ宣言牌のをポンしてへいちゃん氏もテンパイ。こちらはチンイツの勝負手です。次巡、へいちゃん氏がドラのを切り出して、これをかもめのどらさん氏がポン。場は一気に煮詰まりました。5巡以内に場が煮詰まるという岸本プロの予測は当たっていたのです。

 そのご褒美のように岸本プロはをツモ。早テンは三文の得というわけで、500点・1000点のアガリとなりました。

牌図4

 こうして岸本プロは2着となってオーラスを迎えました。リーチ棒を出しても着順が落ちない持ち点はうれしいものです。

 ですが、そうして迎えたオーラスに岸本プロの出番はありませんでした。中盤になって東風の虎氏がリーチをかけ、安目を一発でツモって2着となりました。岸本プロとへいちゃん氏は同点の3着となり、トップはかもめのどらさん氏。氏は前人未到の3連覇に向けて大きく前進しました。


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